4期目の政策大綱

2018年12月25日発表

日本で一番住みよい街に。
SDGs未来都市としてトップランナーへ

平成19年の着任以来、市民各界の有識者と市の基本構想、基本計画をとりまとめ、「元気発進!北九州プラン」と銘打って「人にやさしく元気な街づくり」に取り組んできました。ことに近年は、少子高齢化社会の進展に伴い、地方創生の成功モデルをめざして様々な活性化策を実行しています。そして現在、子育て支援や医療福祉施設の充実、環境未来都市、物価の安定、豊かな食生活など、本市の暮らしよさが各方面から評価されています。その反面、昭和50年代から続く人口減が課題となっています。

本市は、若者の社会動態のプラスをさらに拡大するなど、地方創生戦略を推進し人口減対策の強化に努めていますが、この取り組みには、一層の活性化策の推進に加え、わが街への愛着と誇り(シビックプライド)の醸成、住みよい都市イメージの発信強化が大切と考えます。人、投資、モノの流れを加速するには、過去一時期の都市の印象を払拭し、住みよく明るい街の魅力を内外に発信していかねばなりません。持続可能で日本で一番住みよい街を創ることを本市の目標に掲げてすすみます。

1. 誰一人取り残さないSDGsのトップランナーへ

2015年、国連において全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のめざす17の目標は、質の高い医療や教育、環境、女性活躍、パートナーシップなど、さらに住みよい社会を創造する取り組みと同義です。「誰一人取り残さない、経済・社会・環境の総合的向上」を目標に世界がこの取り組みを始めた今日、日本国内はもとより世界最大のシンクタンクOECD(先進国36か国からなる経済協力開発機構)からも北九州市民の取り組みが注目されています。また、環境・社会・ガバナンスを重視した世界のESG投資は近年急速に増えつつあり、SDGsの達成度、成果は、都市の魅力、経済力に直結してきます。政府から選ばれたSDGs未来都市として市民力を結集し、トップランナーをめざすオール北九州のチャレンジは、必ずや人や投資の流れを加速させることと信じます。

SDGsの具体的な取り組みについては、SDGsを推進する産学官市民のクラブを整備し、情報、課題、成果を共有しつつ歩み続けます。また、企業・市民・団体等のSDGs表彰制度を創設します。幼児、小中高生から大学生、社会人まで、SDGsの学習機会を増やし支援します。

2. 文化創造都市へのチャレンジ

文化は、人を豊かにし、街を元気にします。文化芸術によって都市の活性化をはかる創造都市の試みは、世界的な潮流になりつつあります。この創造都市をSDGs未来都市とならんで市民目標に掲げ、都市イメージの飛躍、にぎわいづくりを図ります。

日中韓政府の合意に基づく東アジア文化都市の政府募集に際し、本市が2年がかりで文化庁に提案した結果、選定された2020年東アジア文化都市事業の成功を当面期します。大阪以西で初の開催であり、1年を通じて「文化のオリンピアード」をめざし、スポーツ振興と合わせて北九州市の文化的で明るいイメージを強力に発信します。このため、市民各界からなる実行委員会を立ち上げ、準備を本格化させます。

2019年のアジアMANGAサミットに続き、2020年に内定している日中韓文化大臣会合の北九州開催に全力を傾注します。また、北九州国際映画祭、国際音楽祭、障害者芸術祭、漫画などのポップカルチャー、伝統芸能、東アジア文学会議をはじめ、演劇、美術、食文化のイベントなど文化芸術活動に注力し、クリエイティブ産業や観光の振興につなげます。将来にわたって、文化芸術による交流を続け、アジアのゲートウェイとして創造都市・北九州市の発信を強化していきます。

3. 経済成長戦略の加速で、人口の社会動態プラスを達成

経済界など市民各界との連携を密に、特区、地方創生関係交付金などあらゆる政策手段を活用しつつ、以下の政策を推進して、ビジネスチャンスの拡大、若者の定着、移住の増に最善を尽くします。

人口の社会動態のプラスをまず達成し、さらには、産学官金労言・住民代表からなる北九州市まち・ひと・しごと創生推進協議会において、上方修正した新たな数値目標を提案し実現に全力を尽くします。

  1. 響灘地区において日本初となる洋上風力発電関連産業の総合拠点を築きます。
  2. 産学官の緊密な連携により、ロボット研究開発、普及について政府から選定された日本のモデル都市として取り組みをすすめます。また、国家戦略特区の活用で介護支援ロボットの実証普及、先進的介護のモデルを構築します。
  3. 北九州空港の利用者は過去最多を更新しており、さらに人と貨物を呼び込むため、24時間空港の強みを活かし、人、モノの流れを一層活性化します。空港将来ビジョン推進強化期間の延長を県に働きかけ、滑走路の3000メートル化の実現に向けて国に要望し続けます。新規路線の開拓、海上保安庁福岡航空基地の北九州空港移転など空港のさらなる活性化に努め、利用者数200万人達成を視野に、軌道系アクセスの実現可能性について改めて調査を開始します。
  4. 九州自動車道、開通した東九州自動車道におけるインターチェンジ周辺での物流拠点づくり、北九州港を活用したクルーズ船の誘致、港湾後背地への企業誘致に努めるほか、国道3号線バイパスなど本市の発展に貢献する道路網の整備に努力します。
    また、関門トンネル開通60年、関門橋45年の現状をふまえ、災害時の代替機能の確保、観光・経済・物流の活性化等の観点から、下関北九州道路の整備促進を決議した北九州市議会、福岡県議会並びに県民各界とともに、国への要望活動を続けます。
  5. 過去最多を更新した観光客をさらに増やすため、外国語表記の充実、商店のキャッシュレス対応の支援、観光地でのコスプレ体験事業、夜景のPRをはじめ、観光地の魅力向上に努め、国際会議や文化スポーツイベントなどグローバルMICE都市の戦略を推進して宿泊客を増やします。
    日本新三大夜景都市に選ばれたことを機に、皿倉山、若戸大橋、門司港レトロ、小倉城周辺を中心とする都心部などの景観を整備し、東田地区、魅力的な食文化、映画ロケ・漫画の街、創造都市の取り組みなどを発信して、観光客をさらに呼び込みます。また、SNS時代に対応した都市プロモーション事業を官民連携で推進します。
  6. わが国屈指のA級B級グルメの街をPRし、農業・水産業、食品産業の振興を図ります。総合農事センターでの食のフェアのように、生産者との協働による地産地消の祭りなどを支援します。
  7. 環境技術協力で友好関係にある世界の諸都市に生活インフラを輸出し、環境ビジネス、水ビジネスを官民連携ですすめます。2018年も日本1位の評価を受けたグリーンアジア国際戦略総合特区の事業を推進し、環境関連投資を呼び込みます。
    友好都市の中国・大連市、姉妹都市の韓国・仁川広域市、ベトナム・ハイフォン市、カンボジア・プノンペン都のほか、環境姉妹都市のインドネシア・スラバヤ市、フィリピン・ダバオ市、大気環境改善の協力先の中国6都市などとの友好連携を深め、環境ビジネスにつなげます。
  8. ゆめみらいワーク事業やキャリア学習をすすめ、青少年に地場企業の魅力、将来性をPRします。ウーマンワークカフェ、シニアハローワークを活用した女性やシニアの就労支援の強化に加え、外国人労働者の受け入れ環境の整備など、多様な雇用対策を強力に推進し、深刻な人手不足の解消に努めます。
  9. 企業誘致、本社機能の移転、創業支援、事業承継支援に引き続き注力します。地場中小企業の生産性向上と競争力の強化、商店街の振興、新たな産業の集積による雇用の創出など、地域経済の活性化に全力で取り組みます。国家戦略特区のさらなる活用、企業の投資促進・地域振興に資する土地利用制度の見直しを検討します。
    市民生活密着型の公共事業を重視し、地元企業でできる仕事は地元への優先発注に努めます。
  10. 小倉、黒崎の商業ビルの再生に向け、経済界と連携しつつ全力を傾注します。
    文化庁のミュージアム・クラスター事業の選定を受けた東田地区は、スペースワールド跡地開発を含め、にぎわいの新たな都心形成をめざします。
  11. 東京オリンピック・パラリンピックを契機に、スポーツ振興、にぎわいづくりに鋭意取り組みます。ラグビーワールドカップでの強豪ウェールズのキャンプをはじめ、ワールドラグビー女子セブンズ大会、卓球世界大会の誘致、オリンピックでのタイの卓球、テコンドーチームなどのキャンプ地誘致などによって、見るスポーツの振興とあわせ、外国人アスリートと市民との交流プログラムを推進します。
    また、ミクニワールドスタジアムは、球技をはじめ、子どもからシニアまでスポーツやコンサート等を楽しめる場として活用します。シンボルチームであるギラヴァンツ北九州のJ1昇格を期して市民と応援します。

4.「元気発進!北九州プラン」の総仕上げ

(1)高齢者にやさしい街づくり
  1. オール北九州で健康寿命を2歳延伸する市民活動を支援します。減塩など食生活の改善、社会参加の促進、健康マイレージの活用、文化スポーツの振興、特定検診、がん検診など健康診断の勧奨などをすすめます。人生100年時代、生涯現役のまちづくりをすすめ、市民センター、図書館の利活用など、生涯学習環境の整備、人材育成に努めます。
  2. 地域全体で見守りを行う「いのちをつなぐネットワーク」の拡充に努め、子どもや一人暮らしの高齢者などの見守りの体制強化をめざします。
  3. 「北九州市いきいき長寿プラン」に沿って福祉政策を進めます。医師会、歯科医師会、薬剤師会等との連携で引き続き医療政策の充実をめざし、子どもの在宅医療の充実については、医師会等と研究します。
  4. 認知症支援・介護予防政策の充実に努め、認知症への理解を深めるため市民サポーター10万人をめざします。介護職員の処遇改善を国に要望します。
  5. 市民が楽しく健康増進を図れるよう、皿倉山から河内へ向かう自然道や風師山など各地域の遊歩道について、市民のウォーキング環境、景観を整備します。また、身近なスポーツの振興や地域住民に親しまれる公園の段階的整備に努めます。
  6. 雑誌で「50歳から住みたい地方ランキング」の日本一になった北九州市への移住、就労、起業の支援を続けます。
(2)子どもを大切に育てる街であり続けます
  1. NPOによる「次世代育成環境ランキング」で政令市7年連続1位の評価をふまえ、妊娠から育児まで切れ目のない支援を充実するため、「元気発進!子どもプラン」を推進するほか、子育て世代の移住を促進します。
  2. 中学生の通院医療費の助成など、子ども医療費の拡充については、引き続き国や県へ要望しつつ検討します。
  3. 保育環境の充実に引き続き努めます。障害児保育の支援拡充、保育士確保に資する国の支援を活用した住居費助成などに着手します。
  4. 教育日本一をめざす本市の「元気発進!北九州プラン」の旗を掲げ続けます。教育のいい街に人は集まります。教育委員会との協議をふまえ、予算調整権を有する立場から教育発展に最善を尽くします。
  5. 幼児教育をテーマとする研修会や障害児対応など幼児教育への支援の充実に努めます。
  6. いじめ、不登校対策の充実に努め、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、部活動指導員など専門的な人材を更に活用します。また、地域においては困難を抱える子どもたちの自立支援のため、子ども食堂など居場所づくり、学習支援、アウトリーチ型支援などNPOや関係機関と連携して進めます。
  7. 子どもを虐待から守る条例にそって関係機関の連携を強化し、虐待の未然防止、 早期発見、対応、子どもへの支援に全力を尽くします。
  8. 時代を先取りしたICT教育インフラを段階的に整備します。教育委員会の学力・体力の向上策を引き続き支援し、教員の確保、負担軽減に努めます。
  9. 災害から命を守る防災教育やSDGsの学習、リサイクルや食品ロス削減などの環境学習を低学年から開始します。
  10. 特別教室等へのエアコン設置の検討など快適な学校施設の整備や通学路の安全対策の充実に努めます。
  11. 子ども図書館と学校図書館等の連携で子どもの読書習慣の定着をすすめます。また、小学3年生全員の美術館ツアーを継続するとともに、合唱祭、文学コンクール、文化芸術のアウトリーチ、インリーチ事業を拡充します。また、京都や東京など他都市の事例も参考に、閉校した学校の活用策を検討します。
  12. 北九州市非核平和都市宣言をふまえ、戦争を知らない世代に平和の大切さを伝えるため、嘉代子桜の植樹をはじめ、長崎市への訪問などの平和学習や、(仮称)平和資料館の開館準備、活用に努めます。
(3)共生社会の創造
  1. まちづくり協議会、自治会や社会福祉協議会の活動は、防災、防犯、子どもや高齢者の見守り、環境美化など市民生活の向上に重要な役割をになっています。この自治会等の活動への支援に努めます。また、市民センターを中心とする地域コミュニティの在り方を検証し、次世代につながる組織・人材育成・施設の体制整備を進めます。
  2. 障害のある人もない人も共に安心して暮らせる共生の街づくりを進めています。「北九州市障害者支援計画」に沿って共生社会を目指し、障害者雇用率の向上ならびに発達障害者の支援事業の拡充をはかります。障害者差別解消法、市の条例の周知啓発の徹底をふまえ、自立と社会参加を支援します。また、障害者芸術祭やふうせんバレーボールの普及、車いすバスケットボール国際大会の継続、バリアフリー社会の構築に努めます。
  3. 「北九州市男女共同参画基本計画」を着実にすすめ、市の審議会等の女性委員比率5割を維持します。また、審議会等への若者の参画をすすめます。市役所においては、イクボス宣言の実行、女性専用のハラスメント相談窓口の設置、時間外労働の縮減、男性の育休取得の促進などをはかり、市三役への女性の登用を検討するほか、2040年に女性管理職40%をめざします。
  4. イクボス宣言に賛同する各界の経営トップが増えるよう、商工会議所などと連携し呼びかけます。社会全体でワークライフバランスを推進し、ソフリエ、パパシエの認定など男性の育児参加、男性の育休取得の促進、時間外労働の削減など意欲を高める働き方改革をすすめます。
  5. あらゆる差別をなくし、すべての市民が人権を尊重される人権文化のまちづくりをすすめます。また、オリンピック憲章に明記されるなど、人権問題として国際的にも理解が広がっている性的少数者に配慮した行政対応に努めます。
  6. 専門性、技能を有した外国人材等の受け入れに際し、多文化共生社会を推進するとともに、労働環境の実情把握や生活支援相談の充実に努めます。
(4)安全安心のまちづくり
  1. 地域防災計画の充実に努めます。防災体制の強化に資するよう、国、県、消防、警察、自衛隊、海保、関係行政機関との連携を密に、防災、減災の事業を着実にすすめるとともに、共助の理念に立った地域の防災活動、要支援者対応を支援します。老朽化した危険な空き家・廃屋対策をすすめます。
  2. 公共交通の利用促進とおでかけ交通の拡充をはかります。また、BRTの拡充や自動運転バスの実証をふまえた活用など、これからの公共交通のありかたを研究します。曽根地区など、渋滞の緩和、交通体系の見直しを研究します。
  3. 学生の集う折尾の再開発、副都心黒崎、新たなにぎわい拠点の東田、都心小倉、国際観光拠点の門司港レトロなどの整備、また、日本遺産、世界文化遺産等の保全、PRに努めます。平尾台、曽根干潟、響灘ビオトープなどの自然環境の保全をはかります。また、山田緑地をはじめ里地里山の保全・活用、まちなかの公園緑地の維持、質の向上に取り組みます。
  4. 犬猫致死処分ゼロ社会を実現するため、市民とともに引き続き取り組みます。市民引き取りを効果的にすすめる愛護棟の新設などをふくめ、老朽化する動物愛護センターの在り方を検討します。
  5. ピーク時の刑法犯認知件数を8割減らした今、地域の防犯活動や立ち直り支援、再犯防止策などをすすめ、日本で最も犯罪の少ない街をめざします。警察、行政、事業者、市民一丸となって、暴力団本部事務所の撤去など、引き続き暴力追放運動を継続するほか、離脱・出所後の自立更生を支援します。

5. 行財政改革は立ち止まらない

新たな市民ニーズ、行政需要にこたえるためにも、PDCAの視点で組織、政策を不断に見直し、選択と集中をすすめなくてはなりません。平成25年度策定の行財政改革大綱は、社会経済情勢の変化もふまえて見直しつつ、公共施設マネジメントの確実な実施など行財政改革を着実にすすめるとともに、中期財政見通しのもと収入確保、歳出適正化への不断の取り組みによって、健全で持続可能な財政運営に鋭意努力します。